「Among Us」は、オートマトンの優秀な記者も伝えるように「なんでヒットしたのかわからない」というゲームだ。

システムはいわゆる人狼もの。ボードゲームを始祖とする非対称ゲームの一種で、簡単に言うと『仲間内にいる裏切り者ひとりを探して腹くくらせる(くくる)ゲーム』だ。ボードゲーム版の完成度は高く、このオンライン最盛の時代にいまだにローカルな人気を誇るシステムを持つ種類のゲーム...そのデジタルオンライン版もまた、ローカル版の改良亜種として、世に多く、しかも必然的に出てきた。

それらは「Project Winter」に始まって、今急上昇ランクに入っている「Among Us」に至る。ゲームの内容についてはいくらでも解説文があるからそこは割愛する。この時代重要なのは、「”Amoung Us”のように、流行る理由も流行る可能性すら見受けられなかったゲームが、なぜ今になって万単位のユーザ数を確保するに至ったか」という一点だけである。

「Project Winter」のほうは、事実上ボイスチャット必須であり、しかも人狼もののアイデアが如実に表れる、(完成度は高いものの...)”仲間内で辛さのあるゲーム"とも評されるのに対し、「Among Us」はたしかにSFのアイデアが凝らされた、無駄を切り取った単純な人狼ゲームになってる。このゲームを初めてみたとき、(先に書いたように)誰もがこれは「流行らないな」と思ったものだ。現に、2019年7月時点で、ユーザ数はあって100~500だった。もっとももともと、長年発売から一桁のユーザ数の時代、『極寒の時代』があったのだ。ではなぜ流行ったのだろうか?

「そこには理由があるはずだ」と思うべきかもしれないが、オートマトンの記者が伝えるにあたって、その記者の意見こそが本質を突いている。それが、「なぜ流行ったのかという理由は、後付けでしか考えることができない」というものだ。全くその通りで、我々はタレブも言うようにコンテンツ不確実性の時代に生きている。だから、なぜ流行ったのか?その理由は基本的には誰にもわからないとしか言いようがない。

「Among Us」はたしかにSFもののアイデア...監視カメラや電子機器などのガジェット類のアイデアをもっているゲームだ。たしかに工夫はある。が、長年陽の目を見なかったタイトルであり、全く持ってヒットするとは思われなかったゲームであることのも歴然たる事実。このゲームが神ゲーとまであがめられるようになったことを見極めた人は極限まで少ないはずだ(というより、ほぼ0人だろう)。インフルエンシングストリーマーの影響があったし、現にあることは事実だろう。だが、だれが目を付けてだれがどのようにインフルエンスしたかということまで詳細を追っていかねば、なぜ「Among Us」がメガヒットしたかまで行き届かないのは当たり前のことだ。だから、一般人・第三者からしてみれば、”なぜヒットしたのかわからないのにヒットしている”ゲームなのだ。

昔、投資家や実業家の意見を俺もよく聞いた。彼らには「ヒット作には理由が必ずあったはずだ」と言われることが多かった。開発者本人たちからすれば「なにも理由はなく驚いているのに...」と実際いうのに、エンジェル投資家は「理由が必ずある」として、この点だけは断固として譲らなかった。これは投資や起業をめぐる最大の謎である。”不確実性とは何か?”ということを本作は呈しているからだ。開発者本人たちがわからないのに、その理由を一般人以上のアナリストでも、わかるわけがない。

未来が見えないのは必然であるとともに、
”ゆらめきの真実”にある向こう側は誰にも見えない

私見では、売ってみなければわからないタイトルもあるはずだ...ということを、「Among Us」は呈していると思う。